屍はやがて糧に

umitanuki2007-03-29

ちょうど7年が経った。

今日のように生暖かい冬と春の間の陽気で、春休みのうららかな日差しが景色を白やんでいた。

病院へは、一人で自転車で行った。20分ぐらいの距離だったと思う。連絡を受けて、他の人が支度を整えているのも待ちきれず、真っ先に家を飛び出した。


昼とも夜ともつかない病室で、小さくなったからだが小刻みに揺れ、あたりは静かだった。

我が屍を食え。食うて、己の糧にせよ。そう、聞こえた。だが、そんな囁きに耳を傾けられるほど、自分は熟していなかった。食らう屍などいらぬから戻って来いと。何よりもそう思った。屍として身になろうなどおぞましい。死したからだほど無責任なものはない。


7年が経った今、いつのまにか我が肉となった屍に気づく。屍の香りは春ののどかな花の匂いに似ている。

旅と同じように、墓石という道標に意味はない。ただ、墓石のまわりに息吹く生命の匂いと、生ぬるい景色だけが意味を持つ。