LTCM伝説読了

沖縄から帰ってきました。
台風一過で八重山はすっかり秋模様。それでも西表のマングローブは青々としているあたり、生命の力強さを痛感します。

ミャンマーで射殺された記者のニュースは、自分にとって印象深いものがあります。前回はイラク戦争直後に武装派に拘束され、生首を落とす映像をインターネットで公開された大学生(名前は忘れた)。あのとき、確かエルサルバドル辺りにいて、ネットカフェでその映像を見たときに、立ち直れないような気がしました。日本人が海外で命を落とす、それ自体はどうだっていいんですが、2つの事件に共通するのは、最前線が見たいという一心でリスクをとった結果、戻ることができなかった、ということ。エルサルバドルから中米を通りパナマへと抜けた当時の自分も、その先にはダリエン・ギャップという命と引き換えにもできうる魅惑の人類不踏の地があったわけで。というかその前にアルジェリアからモロッコのあるはずのない国境を抜けたときの感覚が、今でも身体に残っています。地の果てとか戦争のど真ん中とか、とにかく他の人が行かないところ、人類がまだ開拓できていない場所への強烈な興味は、男子なら多かれ少なかれ持っているのではないでしょうか。

ところでミャンマーの一件は勃発の原因が国内のガソリン価格の急騰にあったそうな。もしこれが本当ならば、
記者射殺←ミャンマー騒動←国内ガソリン価格の急騰←原油価格の高騰←インフレによる物価上昇圧力←FRB利下げ←信用収縮←サブプライム
となり、記者が射殺された究極の原因はサブプライムということになる。やるせない。金融市場だけで切った張ったのうちはいいけど、実際問題につながるとこれは遺憾極まりないことです。まあ世界は連続で滑らか、至るところで微分可能ということかもしれませんが。

そのサブプライムの原因を追っていくと、グリーンスパンの98年緊急利下げまでたどり着くわけです。LTCM崩壊による危機。そんなわけで、LTCM伝説読了。




いや、長かった。2,3年前に買って何度かトライしたものの、最後まで読みきることがなかった本書ですが、このたび無事読み終えることができました。それでもまだ中身について理解があやふやなところが多い。それだけ、情報の密度が濃いってことです。皆さんにもお勧め。繰り返し読んで、デリバティブ金融工学が一体何を操作しているのか考えるにはよい本です。数年に一度読み返すだけでそのときそのときに得られるものが多そう。古本はまとめて整理する派の自分も、本書だけはしばらく保持することにします。

アジア通貨危機が起きてロシアも危機に陥って、LTCMが崩壊してFRB金利を下げて米住宅価格が緩やかに上昇、証券化証券によって世界中に分散されたリスク(というかバブル)が徐々に暴走をはじめ、一時的な市場ショックを緩和するために各国中銀が資金供給を行い米金利がまた下がり、アジア通貨が上がってインフレ気味にコモディティ物価が上がりガソリン価格に我慢できなくなった怒りによって一人の日本人記者が死んだことを思うと、世界はつながっているのだと思わされます。しかしながらLTCMはマーケットが「連続で滑らか」という前提を立てたために崩壊しました。