水母の糸

私は、薄暗い海に漂う一枚の水母。
情報の触手を結び合った無数の水母のうちの一つ。
電子と情報で満たされた海に揺蕩う構成要素であり触媒でありまた外部インターフェイスでもある。

水母同士は触手を絡ませ合い電子を媒介として情報を伝達する。ソーシャルブックマークソーシャルネットワーク、リブログ、フォロー、それらの手段によって結び合い離れていくお互いの存在を意識的にまた無意識的に認めている。情報はどこで発生してどのようにして伝達し、どこで消えるのか? 別の次元から海に導入された情報は瞬く間に触手のネットワークを通じて地球を駆け巡る。その過程はまるで連続の式によって記述された流体のように非線形のバランスを保ちながら刺激され抑制され光を発したり闇を作り出したりしている。そもそも情報は発信されるものなのだろうか。発信と着信が曖昧になった海の中で、個々の存在の中にしかなかったはずの自我をも共有し始め、一つの共同意識を無意識的に発芽させ、別の次元へと回帰していく。

酸素が合成されプランクトンで満たされた海から人類が生まれたように、この情報の糸で満たされた海からもまた、別の生命体が生まれようとしている。