アメリカとか日本とか
最近読んだ本とブログを交えながら週末の日記。
Life is beautiful: 日本は世界経済にとってのガラパゴス諸島
学生時代、旅に出まくって思ったことのひとつに、「(ポジティブに)日本てこのままでいいんじゃね」ってことがあります。初めてインドに行ったときは、ていうかそれ以前は、「日本てこのままだとやばくね」って教えられてきたし自分もそう思っていて、どこかで
欧米 > 日本
みたいな図式ができあがっていたのですが、ガラパゴス諸島かどうかは別として、日本のアイソレーションというのはとても貴重なわけで。広大なアジア大陸の向こう、もしくは太陽の沈む太平洋の反対側にあって、米ばっかり食べて背が低くてメガネをかけていてやけに手先が器用で、蒸し暑いのに必死でスーツ着て、死ぬまで働いて、外貨稼いで、海外の不動産とか絵画とか買い集めて、バブルが弾けて自殺したりしている国なんて、他にねーよ。歴史的にもねーよ。そういう「異国」って、実は海外旅行としてはとても楽しい目的地になりうるわけです。少なくとも自分がヨーロッパ人だったら、一度は日本に行ってみたいと思うのです。やっぱり自分の理解の範疇にある国とか文化を、ガイドブックや教科書の情報の「確認」として訪ねるよりも、マダガスカルのバオバブの木みたいなとても理解が及ばないファンタジーの国の方が絶対に面白いわけで。外国のひとつとして日本に訪れる非日本人の皆様よ、どうか存分にこの珍妙な国を楽しんでください。
というわけで、トーキョー金融道、読了。「日本はisolatedだ、それも北朝鮮のようなaggressive isolatedではなく、moderate isolatedな国だ」とは、本文中の藤巻氏の言葉ですが、上のガラパゴスの記事とリンクして楽しいですね。ただ、金融系の人はどうしても「欧米に追いつけ、追い越せ」というところが強く、「日本の銀行はダメだ」「日本人はリスクというものをわかっていない」「日本の金融はアメリカの10年後ろだ」という論調。特に藤巻氏。松本氏の方がスマートというか、ロジカルに物事を見ている気がしますね。どちらにせよ、この三人はとてもJapanicというか、「ざ・じゃぱにーず・びじねすまん」の典型を行っていてちょっと滑稽な感じです。アメリカに住んで、たとえばメジャーで活躍している野球選手なら、こういうおじさんにはならないだろうな、と思います。ガラパゴスの中島さんはマイクロソフト米国本社出身なわけですが、今もシアトル在住のせいか、日本的な物言いがとても少ない。いろんなタイプがいますが、IT系は「(ポジティブな意味で)日本ってこのままでいんじゃね」的なノリの人が多いのに比べて、金融系の人はどちらかというと「日本ってだめじゃね」もしくは「(自虐的に)日本ってこのままでいんじゃね」なノリの人が多いような気がします。後者は物書きや政治家にも多いですね。
ただ、とにかく読み易い。「為替は原因か結果か」「不良債権が悪いのか」「ドル建てで国債を大量発行するとどうなるのか」「日本って結局土地の値段で経済が回ってる」などなど、かゆいところがよくわかる、それでいて3人の語り口の旨さ。マクロ経済ってこんなに簡単に説明できるものなの??と逆に疑ってしまうほど。IS曲線とかに惑わされて金融経済の大事なところがうやむやな人向き。
金融というよりはマイクロファイナンスという意味合いで興味深かった一冊、グラミン銀行のモハメド・ユヌス自伝。チープ革命の21世紀、1億円を稼ぐなら1円を1億人から貰うようなビジネスこそが生き残るのではないかと常々考えているのですが。。。マイクロファイナンスって、そういう話ではないみたいですね。少なくとも、自伝の内容はマイクロファイナンスを金儲けのテクニックとしてこれっぽっちも捉えていないし、そんな説明はどこにもない。あるのは、モハメド・ユヌスという人間が何を考え、どのように実行したかということと、バングラディッシュがいかに貧困か、ということ。ファイナンスという形態になったのは結果であって、とにかく貧困を根絶するために何をすべきかを徹底的に考え抜いた、そして結果が生まれた。それにしてもこのおっさん、かなりバイタリティありまっせ。やっぱ、ノーベル平和賞をとるってことは生半可ではないわけです。自分の定めた目標に向かって一歩一歩着実に歩く。必要なのは情熱と根気の交渉であって、どこからどこへもジャンプすることなんてないんですね。とても地味で、泥臭い。でもそれしかないんだなって、思わされる一冊です。
んなわけで、コンピュータでも金融でも貧困でも何でもござれ。何かに固執することもなく、ただ漂うだけでもなく。