エンロン、フィデル

この週末、二本のDVDを見た。共に、ドキュメンタリー。嘘と誠を見分けるために敢えて量作品を選んだ、というのは大嘘で、英語の勉強になるかと思ってエンロンを選び、キューバ革命には目がないのでコマンダンテを選んだだけ。


一本目は、エンロン

ケネス・レイ、ジェフ・スキリング、アンディ・ファストウ、そしてルー・パイ。いかにしてその巨大企業をでっちあげ、売り抜けたか。そしてアメリカ全体を巻き込んだ嘘の塊。偽りが偽りを産む虚構の構造。アンダーセンをはじめとする会計監査、弁護士、メリルリンチJPモルガン・チェース、シティなどの証券会社、そしてジョージ・W・ブッシュ、アーノルド・シュワルツネッガーを含めた政治家。彼らすべてを金で取り込んだ砂上の楼閣。もっとも賢い人間とは、ルー・パイのように3億ドルを売り抜けてぬくぬくとハワイの地主となる人間ではないか。そう思わせる一品。

二本目は、フィデル・カストロに語らせたコマンダンテ

嘘偽りのない、フィデルの語り。これまで憶測や研究によって描かれたキューバ革命チェ・ゲバラの生き様については腐るほどの書物や映像があったが、この作品はフィデルが本当に語った物語をそのまま編集している。2002年の作品、ということは革命から43年。キューバ革命からキューバ危機におけるフィデルの立ち位置、その後の経済封鎖などを経て、フィデル自身が何を考え、何を実行したか。そのすべてが詰まった良作。

フィデルの偉大さは言葉にすることもできないが、奇遇にもエンロンと見比べることによってより感動を生んだ。40年以上の歴史を経て、真実を貫き通した一人の革命家。その姿勢はいくつもの彼の語りによって示される。

歴史とは相対的なものだ。

私は私自身の独裁者であり、また国民の奴隷である。

今まで1秒たりとも、他人からどう見られるかということを省みたことはない。

人が作り出したものは何も信じない。

もう一度生まれ変わるとしても、また同じ人生を歩むはずだ。

キューバとアメリカ。その偉大さにおいてどちらを選ぶべきかは見る人それぞれに任せるとしても、エンロンが巨額のマネーを罪なき一般庶民から吸い上げている間に、キューバが貧困にあえいでいた事実は皮肉に値する。


そういえば、来年は2009年。1959年の記念すべき革命から50周年となる。そこにはもはやフィデルもチェも舞台から去ってはいるが、最後にチェの言葉を思い出しておこう。

Patria o muerte. Hasta siempre.
- Che Guevara