中国のインフラに見る意思決定の違い

先日北京に仕事で行ってきた。噂通りの大気汚染とグレートファイヤーウォール、英語の通じないタクシーにはなかなか骨が折れたが、久しぶりに新しい世界を体験できたのはよかった。

 

中でも北京の地下鉄には驚いた。清潔で近代的な地下鉄が北京中に張り巡らされており、巨大な北京の市内をかなり便利に移動することができる。タクシーの運転手には英語が全く通じないが、地下鉄には中国語と共に英語が併記されており漢字が読めない西洋人でも移動に問題がないし、プラットフォームには液晶掲示板が設置されていて現在時刻何時何分何秒まで表示され、次の電車まで何分というのがわかる。プラットフォームドアがあって転落の心配もないし、何より時間通りに電車がくるし本数が多い。ラインの乗り換えは多少歩かされるが、新宿駅のような迷路に迷い込むことはなかった。そして料金がどこまで行っても1回40円もしない(2元)のだ。

 

ホテルを市街の北西(IT企業が集まるエリア)にとっていたので少し北部を歩いたのだが、まだまだ開発は続いており、もう一つオリンピック会場を作るのかと思うほどの巨大な空き地が工事中だった。

 

北京でのある夜そんな話を同僚のインド人と高尚な中国茶を飲みながらしていると、彼が非常に興味深い話をした。曰く、インドも中国と同様巨大な人口を抱え驚くべきスピードで成長しているが、中国のインフラの質そして開発スピードはインドのそれにくらべて非常に高い。その理由は両国の意思決定方法によるところが大きいのだ。インドは30以上の異なる言語とそれに紐づく文化、宗教出身の人が集まっており、また徹底した民主的な政治なので何をするにも時間がかかる。合意を得るまでの議論のリードタイムが長いのだ。翻って中国は様々な民主化が進んでいるとはいえ、基本的にはまだまだ共産党がすべての意思を決定していくスタイルで、上がやれと言えば下はそれをひたすら完遂することに注力する。

 

もちろんこれは上の人間が正確な意思決定を行うことを要求するが、中国のような急速な発展を進める上では重要な要素かもしれない。ボロは出る。あの大気汚染はお世辞にも国民の健康によいとは言えない。それでも、優先事項を並べてやるべきことを順番に実行していくことで、インフラのような巨大な労働を必要とするタスクは次々にこなされていく。おそらくインドのどこかで今オリンピックのような巨大事業を行うのは難しいだろう。北京がオリンピック直前にすべての工場の活動を停止したのも、そしてそれができたのも、中国という国の意思決定システムに依るところが大きいと思う。そう言われてみると、今自分が相対している中国サイドのエンジニアも何かとオープンな議論を避ける傾向があり(避けるというより、単にその価値がわからないという可能性が高い)、自分の決定によって他者に邪魔されずに猪突猛進するスタイルでこれまで成功を納めている。

 

シリコンバレーのエンジニアはかなりの数が外国人だ。サンフランシスコのスタートアップのようなライトウェイトなところは中国人もかなり多いらしいが、自分のいるデータベースを開発するような会社には圧倒的にインド人が多い。データベースは古くからアカデミックで研究されてきているのと製品の性質上理論的な設計が大きくものを言うところもあり、ノリやトレンドよりも学術的な考察に基づく割合が比較的大きい。するとどうしてもPhDなどを取りに行くのだが、インドはIITをはじめとして教育システムが強力に出来上がっているのでIIT学士→アメリカのマスタのようなパターンも多くこの業界にはインド人が多い。そして自分のまわりも相当数がインド人である。

 

彼らは確かに議論を非常に尊重する。インドではコミュニケーションが崩壊していることが前提なので、自分の言ったことが相手に伝わっているかどうかよく確認するし、その他全員が理解しているであろうことも自分が理解できていなければ何の恥じらいもなく基本的なところから質問しなおす。それは非常にアメリカ的だと自分は思う。アメリカ人、特に西海岸出身の人間も同様に、例えば採用インタビューで候補者がこちらの出題をおかしな方法で解き始めたときに、それは本人の解法がおかしいと思うより先にまずはもう一度問題を理解しているかどうかを確認することなどもしばしばある。おそらく共通しているのは民主的な意思決定方法である。移民の国アメリカにおいては、例えばイタリア系移民とドイツ系移民が一つの合意に至るためには、日本のような「わかるよね」というようなコミュニケーションは存在しないし中国のような「俺が言ったことはすべて正しい」というようなやり方では国家が成立しない。おそらく多くのインド人がアメリカで上位に上って行くのも、英語という要素を除けばこの意思決定のDNAが近いことがあるだろう。

中国的な意思決定とアメリカ・インド的な意思決定のどちらが正しいかということはわからないし問うつもりもない。少なくとも我々のようなソフトウェア業界の流れとしてはオープンソースのような、時には時間がかかるけれども非常に開放的で民主的なシステムが多くの成功を納めているし長期的に見れば優れたデザインが出てくるのも事実だが、一方でiphoneのような独裁的な意思決定に基づく製品が短期間で世界を席巻することも少なくない。重要なのは、それぞれに異なるやり方があり、自分の相手がどのようなスタイルを取っているかを見極めることだと思う。そうすれば次の一手が見えてくると思う。

 

Technology Reviewのメモ

今読んでいるTechonology Reviewは2012年10月号だからだいぶ季節外れになってしまったが結構面白いので自分のためにもメモしておこう。

35歳以下の発明家35人

LytroのRen NG。この新しいデジカメは深度などのより多くの情報を写真に保存することで、あとからピントの調整ができたりする。技術が汎用化すれば今後のデジカメのデファクトになるような気がする。リンク先のデモもお試しあれ。Hirax.netさんは既にこの技術を悪用(笑)している。399ドルで買えるし買おうか真剣に悩む
・PinterestのBen SilbermannとSpotifyのDaniel Ek。どっちも自分は使ってないけど世の中の人が騒いでいるだけのことはありそう。Pinterestとか、社員60人で$1.5Bのバリュエーションとかどういうことかと。まあこの辺は「技術」なのかという気はする
・水素を太陽光で取り出す技術を研究開発するStanfordのWilliam Chuech。燃料電池ボトルネックが水素の安定供給だったりするのでこの辺でエネルギー改革が起きると面白いのだが
・エネルギーついでに、熱を反射したり透過させたり自由にできる窓の研究をしているState University of New YorkのSarbajit Banerjee。西日のきついオフィスにお住まいの方にはうってつけの技術では。本来の効用としてはスマートビルディング
・もう一つエネルギーで水素を吸収するスポンジの開発をするMITのMircea Dinca。水素を分子構造上に吸い込むことでまるでスポンジが水を吸収するかのように大量に保存できるかも。これは数年前流体のソフトを売り歩いているときに聞いたことがあるような気がするので、まあ水素関係はまだ実用できてないのかというツッコミどころも結構ある
・エンジン(内燃機関)を従来より高圧縮にすることでよりエネルギー効率を高めるEtaGenのShannon Miller。こういう要素技術でちゃんと会社にしてプロトタイプ作ったりしている人がいるというのは素晴らしい
・Raspberry Piを作ったEben Upton。$25で遊べるコンピュータは個人的にとても興味があるし、これを開発した動機が「このままではコンピュータの中身を知りたがる少年少女がいなくなってしまう」という危機感だというのがいい。本当は秋月とかがこういうことをやらなければならなかったのでは

何より普段CとかDBとかの技術にしか触れていないけれどもいろいろな分野の技術をさらっと知れるのはとても有用だと思う。NASAの生物学者とたまにお話するるもとても勉強になりますね。

「The Future of Work」仕事の未来。

ITやロボットの発達により、工場とか倉庫とかの仕事が文字通り消えている(いこうとしている)ことが報告されている。AmazonはKivaを買収して倉庫を全自動ロボットで運用しようと本気で考えているらしい。Foxconnて100万人近い中国人働かせてるらしいけれども、ここも本音はロボット化したいとか。でもそんなことしたらただでさえ成長が踊り場曲面の経済をよく思わない共産党政府が黙ってないので時期を伺っているとか。でもどうなんでしょう、ロボット化する費用と割とフレキシブルに新しいことすぐ覚えてくれたりして単価の安い十代女子とほんとに割が合うのかちょっと疑問ですね。女工とかいうとすごい哀愁を感じますがフルIT化ロボットVS女工という構図でみると映画イノセンスセクサロイドロリコン用)のイメージの方が強くなってしまって、そういう意味では人権とかも含めてこれは結構重要な問題のような気がしてくる。

あとは相変化メモリの話とか。

英語ではPhase-Change Memoryと書いてある。これも昨年夏頃にちょっとニュースになってるみたいですね。メモリの大容量化、高速化はデータベースには大きなインパクトがあるのです。一応今のところはSSDとかテラバイト級のメモリでオンメモリDBとか言っても、並行多重クエリ処理やら大量のソートが必要なクエリとかきちんとACID処理するとかなるとトラディショナルなディスクベースの処理の方がまだ有効なのですが、どの辺でターニングポイントが来るかはきちんと見極めておかないといけないし、それがこなくても例えばトランザクションログはそいういう高速メモリストレージにのせるのが基本になるとか、そういうのはハードウェアの進化によってだいぶ影響されます

メモは以上。

Technology Reviewと言えば前職でお世話になった方々がMIT出身だったので卒業生として送られて来ているのを拝見したことがあったが、当時はやはり英語の壁もありほとんど読めなかったような気がする。数年後に改めてその価値がようやくわかって来たような気がする。今自分の中ではHarvard Business Reviewと対を成しているけれども、両方ともBarnes & Norbleで気軽に立ち読み・購入できるのが素晴らしいと思う。雑誌はしばらく電子書籍では無理そうですね(UX的に)。

ハッカー道


ここのところ毎日のようにBloomberg Westを見ているせいもあり、数週間にわたってベイエリアの話題はフェイスブックIPO一色かと思うほどだ。今回のIPOは、マークザッカーバーグという人物やSNSという新しいマーケットということもあるが、規模の面でも異色だったことは間違いない。フェイスブックIPOでミリオネア=資産一億円が何人生まれたかご存知だろうか。およそ1000人である。ミリオンダラーを抱えた彼らがパロアルトの本社を中心に新居を探し始めたら、ウチの賃貸価格が跳ね上がることは間違いない。ただでさえ5年で二倍になったという話もあるぐらいである。全く人ごとではない。
そんなミリオネアを1000人出しても、あるいはInstagramを$1Bでザッカーバーグが「つい」買って来てしまっても、この会社の価値は先週の株式公開で約$100Bになったのでびくともしないわけである。公開前は$25から$32ぐらいと目論んでいた株価は、蓋を空けてみれば$38。NASDAQがソフトウェアエラーで売り出しが遅れたとか幹事会社のモルガンスタンレーが裏で買い支えたとかいろいろな話が出て盛り上がっているが、週明け火曜の今日の段階で早くも$30前後を低迷している。遠目に見ても金の匂いを嗅ぎ付けた大人達に囲まれたザッカーバーグの裸神輿っぷりが目に余る。そのぐらい今回のIPOはお金の話がついてまわっている。
Instagramといえば、NYTで読んだと思うのだが、創業者はもともとスタンフォード時代からFBの幹部やザッカーバーグとは知り合いだったようで、株式公開を直前に控えた春先にちょっとあめ玉でも買ってくるわ、みたいなノリでザッカーバーグが独りで話を纏めて来たのもなるほどと思わせた。売り上げゼロ、社員10数名、創業二年の会社が$1Bはどう考えてもおかしいので、逆にそういうもともとの人脈の話を聞くと納得がいってしまったのである。
そんなザッカーバーグの「ノリ」はInstagramが最初でも最後でもない。FBの画面にタイムラインを導入したときもユーザから猛反発を受けたところ「いやまあ落ち着け」とかなんとか火に油を注いだりしていた。翻って先々週の投資家訪問ツアーに際してニューヨークのオフィシャルの場にパーカーで現れたりして大人の投資家達は皆怒っていたらしい。大丈夫、彼には大事な保護者がいて、彼女の名前はSheryl Sandberg、ハーバードMBA、元GoogleのVP Global Salesという猛者であり、現FBのCOO。いつもザッカーバーグの脇にいるので、今度テレビを見るときにはぜひ注目しておいて欲しい。

投資家に向けた手紙の中に「The Hacker Way」と称した彼の会社への想いが綴られたエッセイがある。曰く、「Hackerという言葉は一般にはコンピュータに侵入する人のことを指すことも多いようだが、我々は素晴らしい方法で問題を解決する人のことをハッカーと呼び、自らそうなるよう、そしてその素晴らしい手段で世界をオープンにコネクテッドにすることを使命とするものである」ということだ。もしかしたらHackerという言葉自体が投資家をはじめとするソフトウェアエンジニア以外の人には目新しく聞こえたかもしれない。しかしあなたの隣のソフトウェアエンジニアに聞いてみてほしいのだが、2012年のこの段階でHackerをこのように定義すること自体、少なくとも私からしてみれば「痒い」気がする。古く前世紀はRichard Stallman、今世紀初頭でもPaul GrahamなどがHackerをこのように定義しており、あまりに既知の事実であることからまた多くのHackerが自らのことをそのように名乗ったり再定義したりすることに若干の躊躇いを持つことが普通だと思う。それを堂々と公の場で発言できる彼は、何かそこに強いこだわりがあるように思う。
全てがその調子なのだ。ニュースでは語られないが、ザッカーバーグの行動を眺めていると、Hackerになれなかった自分に対するコンプレックスのようなものが見え隠れする。Googleでさえ、投資家訪問会の際にあわててネクタイを買って来たのだ。それが、エンジニア色の薄いザッカーバーグがフードで現れた。
考えてみれば、FBはハーバードで生まれた。ハーバードの人間は本当に優秀だと思うが、西海岸でエンジニアをしているという人はあまり知らない。風土も教育も全く違う。それでも彼がHackerコンプレックスを抱えるのは一体何なんだろうと考えさせられる。なぜなら、私自身が大学でほとんど計算機科学を学ばなかった「なんちゃって」エンジニアだからである。世の中には自分が全く敵わないレベルのエンジニアがわんさかいる、そういうことを痛感させられるのがこの土地のいいところでもある。それを悟ったザッカーバーグは2006年にはコードを書くのをやめた。その諦めが全く自分にも必要である。
ザッカーバーグはおそらくほんとうに(平均的なエンジニアレベルで見て)コードがかけない。が、フェイスブックはすばらしいエンジニアリング力を持つ会社であることは間違いがない。事実、ThriftやCassandraなどの強力な基盤技術を独自開発したり、MySQLの特にInnoDBをハックしまくっているおっさん(元Google)が在籍したりしている。何より光るのはPHPを高速化しましたというやつで、PHPというのは初心者がホームページを書くぐらいの努力で動的なアプリケーションを作れますという藁ような素材であり、初期のFB(あるいはザッカーバーグ)がそれを使ってとりあえず立てた藁の家を、後年、億単位で人が来るようになるにあたってレンガの家に立て替えずにすり替えましたという感覚。つまり、泥臭い技術がわかってる連中が揃っている匂いがするのである。そういう技術の感覚は、Bloombergで語られることはない。だからこそ技術センスを磨いておく必要があると思う。

何が言いたかったか。今回のIPOは典型的なシリコンバレーサクセスストーリーでありながら、技術やギークな話題にとどまらずお金の匂いがぷんぷんしつつ、ビジネス面でも葛藤と矛盾を多いに抱えた素晴らしいケーススタディだと思われる。Bloombergは技術ギーク面に乏しいし、TechChrunchはビジネスやお金の面で乏しい。両者のバランスをとったメディアがないので自分の中で少し纏めてみたというところだが、結論としては、ザッカーバーグ、そのコンプレックスは何ですかと小一時間ほど問いつめたい。

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わからなければわかるまで話すか、諦める

この間@gamellaさんのところで「ライフスタイルの多様性を考える」と題したアンケートを掲載してもらったのでまだの方はぜひご一読ください。一度日本というか東京を離れて感じていることをアンケートという形で浮き彫りにしてみると自分にも発見があって面白いですね。

そんなわけでこの前@gamellaさんがこちらに来たときにも話したのですが、最近自分が感じていることとして、ここでのコミュニケーションが日本に比べると薄いということがあります。ベイエリアという場所はアメリカの中でも特殊だと思いますが、とにかく非アメリカ人の比率が高い。お互い英語で喋ってはいるけれども、抱えているバックグラウンドや幼少時の記憶なんてほとんど共有できないわけです。例えば日本人同士で今30前後の人だったら、「じゃじゃ丸、ぴっころ、ぽろり」はわかるわけですけど、職場でそういう話をするためにはまずNHKがどんな放送局で「お母さんといっしょ(TV JapanではWith Mother)」がどのような影響を子供に与えているかなどを説明しなければならないわけです。そんなめんどくさい話を英語でするなんてすごいと思うかもしれせんが、実際そんなことを説明できるほどの英語力もないのでしたことはありません笑。

インド人はほぼネイティブでしかもアタマの回転が早いのか単に早口なのかわかりませんがすごいスピードで喋ります。アメリカ人とトップスピードで会話しているのを横で聞いていて、「この人達はこれだけの言葉をかわしているのだからきっとお互いの意思疎通がとれているんだろうなあ」と思ったりします。たまにこちらにもすごくよくわかる内容のときがあると逆に「え、この人そんなこともわかってなかったのか」と突っ込みたくなる内容を何度も聞き返したりしています。日本だと、「空気読めよ」で終わるところが、全然終わらないんですね。

なので、わかるまで説明する。本当に何度も説明する。話が通じないのはわからせる方の責任でわからない人が恥ずかしいと思う必要はほとんどない。でもやっぱりわからないことってありますよね当然。そういうときはどうするか。諦めますね。すっぱりと。

日本にいたときに特にビジネスの場でよく思ったのは、「腹の探り合い」というやつで、「こっちがこういう話で筋を通したのだからここが落としどころだっていうことはわかるよね」みたいなことがよくあったのですが、そいう「わかるよね」みたいなことをこっちで勝手に思っているとほんとうにわかってなかったみたいなことがよくあるので、これこれこういう理由でこれは駄目だからこうしようねってことを僕は言ってるんだけどそれでいいよねって聞いてYesって答えをもらえるまではちゃんと話をしなきゃだめだなあ、と最近思ったりしたのでした。

そういう前提の会話だとまず怒るということがない。というかこっちで怒っている人を見たことがない。日本にいたときにどういうときに怒っている人を見たかというと、例えば向こうは「こうするべきだろう」と思っていてこっちはそんなことお構いなしに違う方向に言ったりすると、「なんで先に言ってくれなかったの」とかもっとひどいときには怒っていることすら言わないで「怒ってるのわかるよね」という態度で示されたりする。ここではそういうのはまったくないので不満があればいちいち説明しにくるしそうなるまえに徹底的に念を押されるしそれで期待に応えてくれないときは諦めるとかその人をその後信用しないとかそういう結果になるだけなのです。

以前よく思ったのは日本の首相ってよく「漢字もかけないから駄目」とかすぐ揚げ足をとられるじゃないですか。それって「漢字って小学生の時に勉強したよね」とか「そんなこともわからずに首相やってるんですか」みたいな減点制なんだと思うんですけど、やっぱりそういうのは日本が単一民族単一言語の国家ゆえんのことではありそれはそれでユニークだから否定しないほうがいいのだと思うのですが、コミュニケーションに疲れますよね。コミュニケーションが濃いだけに期待が高いし期待が外れるとすごく怒る。

コミュニケーションが濃い方が生産性は高いというのは当然だと思います。だいたい日本がここまで経済発展を遂げているのはやっぱりそのおかげだと思うんですよね。世界中の国を見渡しても例えば中国みたいに10億人いても1億人しかいない日本と同じ5兆ドルしか稼げないのはその辺に起因するような気がします。ただ、このベイエリアに限って言えばそれだけコミュニケーションロスがあるにもかかわらず生産性はとても高いと思います。コミュニケーションレベルが低いことがよくわかっているので他の方法で予測精度を上げたりバックアッププランを用意したりしてリスクヘッジします。だめならすぐ他の手段をとったり妥協しますがその優先順位が明確だったりします(あ、優先順位の話もすごくしたいので別な時にします)。そういう風にすれば別にコミュニケーション濃度が薄くても生産性は上げられるというのがこの土地での試行錯誤の結果なんだろうと思います。

この辺の話は知識として知ってはいたけど身を以て体験するとやっぱり違うなあというのが最近の実感で、それだけでも来たかいがあるというものですが、まだまだ他にも書いておきたいことはたくさんあるのでまたそのうち。

英文履歴書のススメ、或いは@taromatsumuraさんのLinkedIn本

先日大学の卒業生会が開かれるというのでLinkedIn本社まで言って来たら、そのオフィスのすぐ手前がGoogle本社だったということと、Google社の前の交差点の名前が「Google」だったということに気づいた、そんな今日この頃ですが如何お過ごしでしょうか。

さてそんなわけでLinkedInの方々のお話を聞いて袖の下をもらったり今流行のステマをしているわけではないのですが、半年前ほどに一度お会いした@taromatsumuraさんのLnikedIn本を頂きましたので読んでみました。

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基本的には表紙の通りLinkedIn使おうぜということなのですが、僕自身がLinkedInを通してどのようなメリットを受けているかということが明確に記述されていたので一読の価値ありかと思います。

まあLinkedInヨイショはこのぐらいにして、自分より下の世代の(特に同職種の)人たちに強調しておきたいのは、英文履歴書(レジュメ)を一年に一回ぐらい見直しておきましょうということ。まだ作ったことがない人は今すぐ作りましょう。転職するつもりがなくても作っておくとよいことがたくさんあります。

・自分のキャリアを明確にする
今振り返って日本の履歴書を思い出すと、あれって何も書いてないですよね。あれでよく人事採用してたなという気がしています。レジュメには基本的にキャリアのことしか書かないしそれで面接を受けられるかどうかが大幅に変わるので内容を凝縮する必要があります。逆に何も書くことがないという人は、何もやってないということの証なので、何かやらなければという気になります。

・何をすべきか明確になる
上の裏返しですが、自分で作ってみて他の人と比べると(ネットで公開している人がたくさんいます)、自分には何が足りないのかよくわかります。いくつか他人のを読んでみて、自分で読んでこれはすごいというのを見つけると、自分はどうしたらそういうレジュメが書けるようになるだろうかと真剣に考えるきっかけになります。

・いざというときに使い回せる
転職するときにそのまま使ってもいいんですが、応募する先によってカスタマイズしたりする場合もあると思うので、テンプレートとして作っておくとそういう話になったときに手間取りません。あと名刺の拡大判として自分はこういう人ですというのを初めて会った人に説明するのにも使えそうです。

でそういう内容をレジュメとしてA4で1〜2枚に纏めておくとよいのですが、それをゼロから作るのが面倒なので、LinkedInはフォーマットがある程度決まっていて書きやすいと思います。あと、LinkedIn以前は自分のホームページを持ってそこにWordドキュメントをアップしている人をよく見かけましたが、LinkedInだとアップする場所も無料で提供されるし誰かが勝手に見つけてくれるのでそういう意味でとても便利だと自分は思っています。

書類審査っていっても大学名と職歴の会社名ぐらいしかわからない日本の履歴書はホントに終わってるなーと最近つくづく思うし、まあそれはこれまでの日本社会では大学と会社が個人の信用を担保できていたからに他ならないわけですが、そうでなくなりつつあることを若い人ほど実感していると思うので、新卒採用について文句を言う前に英文レジュメをきっちり作って年1回ぐらいメンテしておくのが吉だと思います。

そんなわけでとりあえず@taromatsumuraさんの本からはじめてみてはいかがでしょうか。

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進化する検索 キーワードや属性ドリルダウンの次

検索!っていうとだいたいみなさん白い箱に単語を入れてボタンをクリックするのを想像するんじゃないでしょうか。もうちょっと詳しい人だとカテゴリで絞り込んだりするのも検索だと捉えているでしょう。

なんか最近、その検索が変わりつつあるんじゃないかと思っています。一言で言うのは難しいですが、単語とかカテゴリとかって、静的な情報ですよね。静的な情報、いうなれば名詞とか形容詞とかでアイテムを探すというのがこれまでの検索。でそれが動的な情報でアイテムを探す検索になりつつあるんじゃないかと。

何を言ってるのかって?
Crowsnestという面白いサービスがあります。オサレの街恵比寿の夜にもつ鍋を食えば奇麗なお姉さんが寄って集まるというスーパーエンジニアの@kaisehさんが作っているサービスです。

Crowsnest [ソーシャル・ニュースリーダー]

Twitterアカウントがあればすぐに始められるのでぜひ試してみて欲しいのですが、自分が面白いと思うニュースやWebページがどんどん出てくるサービスで、一部では「これがあればもう既存のポータルサイトRSSリーダがいらない」と言われているほどのデキです。基本的には自分がフォローしている人が言及したWebページを集めて来て並べてくれるわけです。これまでと何が違うのかというと、Webページを探すのはGoogleにキーワードを入れていたのが、自分がフォローしている人が言及したWebページで探すというように変わって来ているのです。このあいだアップされた@kaisehさんのスライドにもこの辺のことが詳しく書いてあります。

第3回Twitter研究会の発表資料 - kaisehのブログ

要するに、「○○のことが書いてあるWebページ」という探し方だったのが、「自分が興味を持ちそうなWebページ」という探し方ができるようになったということなのです。「自分が興味を持ちそうな」というのがキモで、これってふわふわとしていて「何で探す」の「何で」の部分が明確に指示できないですよね。Crowsnestはこれを「Twitterでフォローしている人が言及した」ことをキーにしているわけですが、そういうふわふわしたキーで検索するのが苦手なのがコンピュータというものです。ちょっと固い言い方をすると「多次元」ということかもしれません。

こんな話があります。


サンタクルスの警察では、減員する警察官と増加する呼び出し電話に対応するため、過去の犯罪データから犯罪が起きそうなエリアを予測し、そこに警察官を重点的に送るようにしている。数学者などを集めてこの予測モデルを構築した。

アメリカの某金融機関では、現金の運び屋に対応するため、トランザクションデータから、支店の地理情報や口座名義などを使ってこれを早期に発見するシステムを構築する予定。実際に昨年この金融機関は100億円近い金額を同様の手口で損失している。

警察は「犯罪が発生しそうなエリア」を探したいと思っているし、銀行は「不正な取引」を探したいと思っています。しかしどちらも単語やカテゴリで探せる代物ではありません。「こんなパターンをしたデータ」だったり、「この情報がおんなじで何となく似ている二つのデータ」だったり、何ともふわふわしています。

前職で検索システムをいじっていたときも、後年はただの検索よりそういった「似た者検索」のようなものの興隆を感じていました。別々のデータベースを一つにしたときには、本来同一なんだけどデータ上なき分かれてしまったデータというのが存在します。これを本来の、一つのデータにまとめる作業を「名寄せ」と呼んでいました。社保庁の例のアレですね。「名寄せ」というととても泥臭いイメージがありますが、よく考えるとこれも同じ問題で、英語では「クラスタリング」というかっこいい名前になることに最近気がつきました。

もう何が言いたいかお分かりですね。情報を探すというミッションはGoogleがやっつけてしまったように思われました。しかしそれは単語によってのみでした。これからはもっとふわふわした動的な情報による検索が始まるのだと思います。それをうまくビジネスにしたら、Googleどころの騒ぎではなくなるような気がしています。

というわけで次世代の検索について考えてみました。「それデータマイニングっていうんじゃないの」という暖かいコメントはぜひTwitterにて@umitanukiへどうぞ。

技術者こそ「ビッグデータビジネスの時代」を読んで一年の計とすべし

一時帰国中に話題のビッグデータビジネスの時代を読みました。

Big Dataというのがクラウドに次ぐバズワードだと言われています。しかし本書をそのような流行の一端として片付けるのはあまりにもったいないです。というのも、読めばわかりますが、タイトルはあくまで釣りで、内容は基本に忠実且つ広く深いITビジネス書だからです。

「びっぐでーた」をテーマに語られる事例は数知れず、ヤマトのIT戦略やコマツGPSがいかに中国の市場を押さえているか、無料風俗をネット配信するビッグシスターの例など、プロだからこそ仕入れている情報からそういうのどこで知るんだろう的なクリエイティブな話題まで、ちょっと逆立ちしても敵わないなという漫談の数々が飛び出します。

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そしてどの話題にも共通するのが、データをいかにイノベーションに活かすかということ。よく考えてみればそれってコンピュータの創世からこっちおんなじテーマなわけで、今に始まったことではない普遍のテーマです。皆さん自分が関わっている業界のことはよく知ってるだろうけど、だからこそこれだけ幅広な語り口は読むに値するわけです。こういう使い方をすればこういう出口があるんだなという頭の柔軟性こそが、あなたの業界のイノベーションにつながるからです。

言うまでもなく、本書も啓蒙する通りそれは「仕様書通りの受発注」では決して起こりえない種類のイノベーションであります。そうではなくて、そこにはデータをこねくり回す技術者が必要で、その技術者がデータの使い方の引き出しを持たなければならない。だからこそ技術者が本書を読むことをおすすめします。膨大なデータを見てうんざりするかわりに目がるんるんしたり過呼吸になりながらこっそりデータの一部をコピーして持って帰るような技術者にならなければなりません。そういう人はきっといろいろな企業から声がかかることでしょう。

というわけでビッグデータビジネスの時代、おすすめしときます。

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蛇足ですがビッグデータの事例ではスマートグリッドというのは非常に面白い例でして、どこかふわふわとしてクラウドより向こうの世界の話に聞こえるビッグデータもあなたのすぐそばにあることがわかります。

Greenplumのお客さんではSilver Spring(シルバースプリング)という企業がおりまして、結構なサイズのデータベースを構築しているんですね。しかも溜めるだけではなくちゃんと活用しています。最近聞いた話ではK平均法でスマートメータをクラスタリングしているそうです。それも幾何学的なクラスタリングではもちろんありません。ジャッカード距離とか使ってるみたいなので、地理的情報以外の特徴量を使ってクラスタリングしているわけですね。想像できることとしては「朝大量に使うクラスタ」などの時間や使用量を地理情報と絡めてるって感じでしょうか。あくまで想像です。

でそれが何かと思うかもしれませんが、先日家のお湯が出なくなって慌てて家中のメータを調べたんですね。そしたらうちの電気メータにもちゃんとSilver Springって書いてあったんですね。カリフォルニアの電気ガスはだいたいPG&Eというところがやっているはずですが、そこが提供しているメータはSilver Springがスマートグリッドしてるらしいっす。そいうわけでビッグデータはあなたのすぐそばにあります。

東京電力とかってどうなってるんでしょうか。先日のSilver Springのニュースリリースでは今後の展開に日本が入っていなかったので多分無理なんでしょうね。東京電力と日立とかでがっちりやって、それはそれでものすごくよくできた仕組みになるんでしょうが、なんと言うか独自すぎたりあっというまに時代遅れになったりしないといいのですが。。。TPPやると日本郵便のトップが外国人になって抱えている日本国債を売り払うから日本が沈没するとか意味不明のことを吹き込まれている人もいるみたいですが、聖域を設けず、適切なタイミングで適切な競争を入れて行かないと、ホントだめだと思いますよ。蛇足おしまい。

そうだった、書評だった。ビッグデータビジネスの時代、技術者の皆様にもぜひどうぞ。

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